#04
伝える技術
数字は、デザインを自由にする
この記事の3つのポイント
- 店舗運営の失敗:知識も経験も計画もなかった
- まずプロダクトと仕組みを深掘りし、次に数字を聞く(価格、原価、年間の販売数、届けたい人)
- 数字をデザイナーと共有すると、デザインにかけられる額が決まり、ほどよい緊張感が生まれる
僕は昔、店舗運営に手を出して失敗したことがある。商売の知識も経験もないまま、売れている商品を仕入れて並べれば売れるだろう、くらいの軽い気持ちで始めた。結果は、まったくどうにもならなかった。損をして終わった。
今では笑い話にできる。あまりに無経験で、無計画だった。負け惜しみではなく、やってよかったとも思っている。そのときに分かったのは、僕は経営者向きではない、ということだった。これが分かっただけでもいい勉強になった。
経営者の仕事は、自分が興味があるかどうか、好きか嫌いかに関係なく、仕組みを作って、ちゃんとお金が回るように整えることだと思う。僕にはそれができなかった。かといって、その商品に誰よりも詳しいわけでも、専門性があるわけでもなかった。それではお手上げだ。
その反省をいかし、いまではクライアントさんと話すときには「プロダクト(商品)」と「仕組み」について深掘りするようになった。その次に「数字」だ。それはいくらで売るのか。原価はいくらか。年間どれくらい売りたいのか、売らなきゃいけないのか。どんな人に届けたいのか。ちゃんと数字に置き換えた、現実的な答えがほしい。地域でものづくりをしている人ほど、いいものを作ることに一生懸命で、数字はあとまわしになりやすい。
数字が出てくると、デザインにどれくらいお金をかけられるかも決まってくる。デザイナーが売上の責任まで負う必要はないかもしれない。でも、年間これだけ売らなきゃいけない、と分かっていれば、多少の緊張感を持って仕事にあたれる。そのほうが、頼む側にとっても、デザイナーにとってもいいと思う。
数字は、デザインを縛るものではない。むしろデザインを自由にしてくれるものだ。