Apr 23 2015

映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を見た。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
※この記事はネタバレというか物語のいろいろに言及していますので未見の方は読まないでください。

第87回(2014年公開)アカデミー賞の主要な4部門でオスカーをゲットしており「2014年の映画の顔」と言うことができる。日本でも公開されたので見てきた。そしておもしろかった。感想終わり。

作品賞 受賞
監督賞 受賞 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
主演男優賞  ノミネート マイケル・キートン
助演男優賞 ノミネート エドワード・ノートン
助演女優賞 ノミネート エマ・ストーン
脚本賞 受賞 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
アーマンド・ボー
ニコラス・ジャコボーン
アレクサンダー・ディネラリス・Jr
撮影賞 受賞 エマニュエル・ルベツキ
録音賞 ノミネート ジョン・テイラー
フランク・A・モンタノ
トーマス・ヴァーガ
音響編集賞 ノミネート マーティン・ヘルナンデス
アーロン・グラスコック

下記、映画の内容に触れますので、未見の方は読まないでください。

いくつか自分のために気になったことを書き留めておこうと思います。

役者自身の経歴を取り入れたメタ視点の映画

心理学のことはわからないので、合ってるかわからないのですが、最近ハリウッド映画でちょいちょい見かける、自己言及的な映画だと思う。自己投影型かな?いや違うか。わからん。要は役者のこれまでの出演作や実生活をネタにして取り込んだ映画ということ。
昔ラジオで聞いた映画評論家の町山智浩さんの解説がとてもわかりやすかったのですが、ダーレン・アロノフスキー監督の「ブラックスワン」のナタリー・ポートマンや「レスラー」のミッキー・ロークあたりが有名。自分たちの現在を逆手にとった「エクスペンダブルズ」のシルベスター・スタローンも同じかなぁ。スパイク・ジョーンズの「マルコヴィッチの穴」や「アダプテーション」も現実と虚構が混ざる感じが似てるような気もします。ちょっと違いますが、デヴィッド・フィンチャーの「ハウスオブカード」のケヴィン・スペイシーが視聴者に向かって話しだすシーンなんかはまさに自己言及的ですね。
「バードマン」ではマイケル・キートンが過去の代表作であるティム・バートン版の「バットマン」がネタとして取り込まています。キャスティングがおもしろいなぁと思ったのは、演劇が命で映画人を軽蔑している相手役のエドワード・ノートンも過去に「超人ハルク」を演じていたり、娘役のエマ・ストーンもマーク・ウェブ監督の「アメイジング・スパイダーマン」のヒロインだったりする点。この映画の中で「芸術性が低い」として、ちょっと馬鹿にされるハリウッドの大作ヒーロー物にみんな出ているのだ。

さまざまな「愛」について語られる映画

この映画の中で、レイモンド・カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること」が舞台で演じられる(映画の中で演劇を演じるというのも実にメタな構造)。この映画を見たあと、たまたまこの本(村上春樹訳)を持っていたのでさっそく読みなおしてみた。とても短い小説なのですぐに読めてしまうのだ。4人の男女が酒を飲みながら「愛」について語っているだけの話。彼らが「愛」について語れば語るほど、その、なんていうか「愛」から離れていって、なんだかみんなドンヨリしちゃうという話。シニカルでいじわるな書き方だなぁと思った。アメリカ人は「愛」が大好きだけど、その「愛」について実は何も知らないのかもしれないのかなと思わせる。まぁそりゃ誰も知らんでしょう。
というわけで、「バードマン」でも登場人物たちがさまざまな「愛」について語り出す。異性愛、同性愛、親子愛、夫婦愛、映画愛、演劇愛、自己愛などなど。「愛」に溢れているものの、カーヴァーの小説と同じように、どうにも噛み合わない。うまくいかない。思い通りにならない。

ひたすら2時間カットが変わらない映画

つなぎ目のわからない長いワンカット風の映像。この離れワザで撮影監督のエマニュエル・ルベツキは昨年の「ゼロ・グラビティー」に続き2年連続のアカデミー撮影賞を受賞。ちなみにエマニュエル・ルベツキと言えば「トゥモローワールド」の市街戦長回しシーンが僕は好きですね。このシーンも実はいくつかのカットをくっつけてワンカットに見せてるだけらしいですが。建物も2階しか無いのに、うまいことつなげて4階くらいあるように見せている。すごい。ちなみにアルフォンソ・キュアロンもアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥもエマニュエル・ルベツキもメキシコ人。関係ないけどギレルモ・デル・トロもメキシコ人。

反復演出の映画

「バードマン」を見ていると、反復している演出が目立つ。お笑いでいう「天丼」だ。女性にビンタされる男性、ビルの縁に座る娘、同じくビルの縁に立つ父、演劇を別の日に上演するシーン、SNSの再生回数、ジャズドラムなどなど。あと、薄っぺらい紙クズみたいなものを心の拠り所にしている親子。これは、薬物中毒を克服するためにトイレットペーパーに無数の線を書く娘と高校時代にレイモンド・カーヴァーが紙ナプキンに書いてくれたという激励コメントを大事にする父という場面。反復・繰り返し・リピート・ループ・合わせ鏡。

第四の壁を破ろうとする映画

「第四の壁」とは「演劇内の世界と観客のいる現実世界との境界を表す概念」らしい(Wikipedia)。この映画は上記のさまざまざ演出や手法を用いて、何かわかんないけど新しい形で「第四の壁」を突き破る映画を作りたかったのかもしれない。撮影監督のエマニュエル・ルベツキもよく「第四の壁」を意識した画作りをする。レンズに飛んだ血しぶき、レンズフレアなど。超リアリティのある映像の中に「これはカメラで撮ってんやで」という不思議な演出を入れてくる。
さて、もしSNSとスマホが軽やかに現実世界へと越境してくる存在だとすれば、この映画はSNSとスマホに対する挑戦なのかもしれない。
作中での「演劇」VS「バカ映画」の構図が「映画」VS「SNSとスマホ」という構図に見えなくもない。まぁこの辺は妄想です。

あ、もういっこ。英語のレビューサイトをいつものYahoo!翻訳で読んで知ったのだけど、クチバシ=Beakと言うそうです。で、Beakは「鼻」という意味もあるそうです。主人公の「鼻」が最後どうなるか……英語がわかるともっと深く色んなことが理解できるんでしょうなぁ。残念。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

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映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を見た。
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映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を見ました。感想というかいろいろ気づいたことをまとめました。
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